会場:出光美術館
帝劇ビル9階(出光専用エレベーター9階)
〒1000005
東京都千代田区丸の内3-1-1
開催期間:2017年11月11日(土)~12月17日(日)
開館時間:午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
毎週金曜日は午前10時~午後7時(入館は午後6時30分まで)
休館日:毎週月曜日(ただし月曜日が祝日および振替休日の場合は開館)
年末年始および展示替期間
入館料:一般1,000円/高・大生700円(団体20名以上 各200円引)
中学生以下無料(ただし保護者の同伴が必要です)
※障害者手帳をお持ちの方は200円引、その介護者1名は無料です
※当館に常設展示はございません。
お問い合わせ:ハローダイヤル(展覧会案内)03-5777-8600
展覧会の構成
第1章
伝える、伝わる ─伝統美の継承と多彩な個性
第2章
王朝の壮麗美 ─かな書の旋律
第3章
正統なる逸格 ─没後400年・後陽成天皇の周辺
第4章
画賛 ─漂泊者たちの遊芸
展示概要
日本における書の伝統と芸術の思潮は、中国を手本としながら独自の発展を遂げたものです。漢字の使用に加えて仮名が併用されるようになった平安時代には、早くも書表現や美意識に変化があらわれて見えます。また伝統美を正しく継承しようとする貴族たちに対し、僧侶や武家たちは創意あふれる自由な表現を楽しんだ中世には、書の世界の秩序を保とうとすべく学書の教則本が編まれています。以降は書の造形や表情に工夫を凝らしたり、巧みさを競い合いながら様々な流儀は派生してゆきました。このような慣習は今なお変わらず、豊かな創意と個性を発揮して多様な美を育む原動力となっています。
本展では、今日の私たちにとって、書への眼差しとはいかなるものかを再確認します。雅びな和様の書が栄華を誇った平安時代。宮廷書法の伝統美が定着し、広がりをみせた鎌倉から室町時代。そして桃山から江戸時代にかけては、公家の文化芸術活動に武家や有力町衆たちも積極的に参画して、書表現にさまざまな革新をもたらしています。時とともに移ろう書の魅力を、約80件の優品より4章のテーマで構成してご覧いただきます。
第1章 伝える、伝わる ─伝統美の継承と多彩な個性
古来、文字は筆墨で記され、さまざまな人の営みを伝える手段として用いられてきました。筆文字が書表現として確立したのちは、とりわけ詩歌や物語などの文芸世界を介して発展し、今日伝わっている貴重な遺品を数多く生み出しました。これらの表情を静かに眺めていると、生き生きとした個性が光って見えます。その奥には規範として学び、継承してきた伝統的な美意識がしっかりと備わっている様子がうかがい知れます。第1章では、書の伝統美はどのように継承されてきたか、またその上で個々に抱いた創意はどのように表されてきたかについてご紹介します。
録詩書屏風(部分) 浦上玉堂
江戸時代 出光美術館
第2章 王朝の壮麗美 ─かな書の旋律
漢字の草書体を参考に、点画の合理的な省略を工夫して創り出された「かな書」独自の世界は、平安時代、11世紀の中頃に完成を見ました。流麗な筆致と優美な姿形とを兼ね備えた表情は、時と共に移ろいながら多彩な美的表現を展開させています。小さな世界の中に示される力強く伸びやかな抑揚表現や旋律的な連綿の表情。緩急自在に旋回する時の変奏する美しさや、その表情に呼応する大らかな余白と構成の美。そして料紙装飾との競演など、いずれも自然界の美しき景観より見出した感性が「かな書」には反映されています。この章では「かな書」独自の表現美をご堪能ください。
石山切 貫之集下 藤原定信
平安時代 出光美術館
高野切第一種 伝 紀貫之
平安時代 重要文化財 出光美術館
第3章 正統なる逸格 ─没後400年・後陽成天皇の周辺
戦国時代の動乱の中、華麗なる飛躍を遂げた桃山美術。本年はこの時代を象徴する一人・後陽成天皇(ごようぜい てんのう 1571 - 1617)の没後400年にあたります。伏見天皇の皇子・尊円親王(そんえん しんのう)が書の正統性と理念とを一つにまとめ上げ、わが国の書の流儀を築き上げて以来、天皇とその周辺の秀逸な能書たちによって、書壇は率いられてきました。桃山時代に至り、新たな境地を見出した後陽成天皇もその継承者でした。一方で彼の周辺には、近衞信尹(このえ のぶただ)、本阿弥光悦(ほんあみ こうえつ)、松花堂昭乗(しょうかどう しょうじょう)ら、革新的な書風を築き上げた能書が肩を並べています。この章では、桃山時代の書の新鮮さと豊かな広がりをご紹介します。
伊勢物語 若草図色紙
桃山時代 出光美術館
和歌色紙 後陽成天皇
桃山時代 重要美術品 出光美術館
第4章 画賛 ─漂泊者たちの遊芸
画賛とは、描かれた画の余白に書き加えられた詩歌などのこと。元来、画と賛とは別の人物が担当し融合させる形式として生まれ、次第に文芸家たちの交流の場となってゆきました。のちには、俳人や文人、禅僧たちの中で両方を一人でこなす自画賛の形式へと発展しています。彼らが書く筆跡は常に自然体で温雅な味わいを感じさせ、能書のような衒(てら)いがありません。まるで水墨画を見るかのように、自在で闊達な線条の趣が心地よく映ります。筆墨で「書くこと」自体を、素直に人の営みの充足と捉えた彼らの趣向が、伝統的な書法をうち破った別格の流儀を生み出したと言えるでしょう。この章では、現代にも生き続ける書表現の遊芸性を、画賛の書風に注目しながら親しんでいただきます。
双鶴画賛 仙厓
江戸時代 出光美術館