湯木貞一(�兆庵)は昭和を代表する数寄者として、生涯を料理と茶の湯に捧げました。茶事や茶会で実際に使用するために集められたコレクションの多くは、茶道史や日本美術史を語る上で重要な位置を占める品々です。
近代数寄者達の社交場であった名品が集まる茶会には「東の大師会、西の光悦会」とも言われるように二つの代表的な茶会が存在します。今展で取り上げる大師会は、三井財閥の基礎を築き財界で活躍する一方で、近代の茶の湯界もリードした益田鈍翁が始めました。多人数が広い場所で茶を楽しみ美術鑑賞をする、いわゆる大寄せの茶会のスタイルを確立した茶会として知られます。大師会へ招待されることはエリートの証であり、政財界の人々は競って参加しようとしました。この結果、新世代の数寄者達が誕生することになります。彼らはそれまで茶の湯とは無縁であった古美術品や仏教美術などを茶席に取り入れるなど新たな茶を行い、近代の茶の湯の在り方を方向付けました。
湯木貞一は大師会で2回釜を掛けており、初参加の昭和39年には「(重要文化財) 佐竹本三十六歌仙絵 在原業平」(後期展示)や「色絵柳橋図水指 仁清」などを用いました。掛物の「在原業平」は、鈍翁が主体となり絵巻を分割し仕立てた掛物として著名です。
本展では当時の数寄者達の華やかで自由な茶の実現の場であり、現在の茶の湯の始まりの場でもあった大師会において、湯木がどのような茶席を演出したかを紹介します。あわせて「名品をすべてご覧いただきます=その1=」に引き続き、湯木貞一が集めた重要文化財や重要美術品を含む茶道具を陳列し、前後期あわせて約50点をご覧いただきます。
会期 平成30年4月1日(日)~6月25日(月)
前期:4月1日(日)~5月13日(日)
後期:5月16日(水)~6月25日(月)
(重要文化財)
佐竹本三十六歌仙 在原業平
鎌倉時代(13世紀)(展示期間:5/16~6/25)
秋田藩佐竹家が所蔵した「佐竹本三十六歌仙絵巻」は歌仙絵の傑作とされ、数寄者達の憧れの的でした。本作は、大正時代に益田鈍翁主導で分断された内の一幅です。
(重要文化財)
祥瑞蜜柑水指 明時代(17世紀)
近年、新たに重要文化財に指定された水指。明時代末に日本の茶人向けの注文によって中国江西省の景徳鎮民窯で焼かれました。茶人に珍重された蜜柑水指の中でも端整な姿と精密な文様が見どころの作品です。
志野茄子香合
室町時代(16世紀)
結文香合 仁清 江戸時代
(17時代)
絵高麗茶碗 銘浅黄帯 明時代
(15~16世紀)
蕎麦茶碗 銘夏月 朝鮮王朝時代
(16世紀)
主な展示品
通期 4月 1日(日)~6月25日(月)
(重要文化財)祥瑞蜜柑水指 明時代(17世紀)
青井戸茶碗 銘春日野 朝鮮王朝時代(16世紀)
御所丸茶碗 銘藤井 追銘由貴 朝鮮王朝時代(17世紀)
前期 4月 1日(日)~5月13日(日)
(重要文化財)高野切 古今和歌集巻第九(断簡) 平安時代(11世紀)
(重要美術品)絵因果経(断簡)奈良時代(8世紀)
後期 5月16日(水)~6月25日(月)
(重要文化財)佐竹本三十六歌仙 在原業平 鎌倉時代(13世紀)
(重要文化財)継色紙「神かきの」 平安時代(10世紀)
(重要文化財)寸松庵色紙 平安時代(11世紀)
(重要美術品)升色紙「はるゆきの」 平安時代(11世紀)