大江戸展について
本展は東京富士美術館(東京都八王子市)の所蔵品による、長崎だけの特別な展覧会です。 同館より浮世絵を中心に屏風、襖絵、工芸品など選りすぐりの名品約110点を前期約70点、後期約80点に分けて展示。教科書で誰もが目にしたことがあるような逸品がずらりと並びます。“本物”だけが持つ迫力、江戸時代に花開いたわが国固有の美意識を、是非ご堪能ください。
九州初公開!
俵屋宗達から尾形光琳、そして酒井抱一へと琳派の巨匠たちによって描き続けられてきた重要な画題である「風神雷神図」。今回、琳派4大絵師の一人で抱一の弟子でもある鈴木其一が描いた襖絵を特別出展。襖の八面を使って、四面に風神、もう四面に雷神が、余裕ある空間の中でゆったりとえがかれています。
大胆な筆さばきによる墨で一気に描かれた雲は、画面に複雑な調子と動きとを与えるとともに、広大な天空を感じさせ、彩色された風神雷神と美しい調和を示しています。
<鈴木 其一>
江戸時代後期に、江戸琳派の優美な画風を基盤にしながら、斬新で独創的な作品を描いた画家として、東京・サントリー美術館での展覧会が話題を呼ぶなど、近年大きな注目を集めています。江戸琳派は、尾形光琳の没後、酒井抱一が興し、その一番弟子が其一です。 其一の作品は、近代に通じる都会的洗練化と理知的な装飾性が際立ち、近代へと向かう日本画壇において先駆的な絵師だと位置づけられています。
“教科書で見た”逸品がズラリ!
東京オリンピックを控え、「日本の文化」を見つめ直す機運が高まる中、江戸時代に花開いたわが国固有の美意識を、屏風、襖絵、浮世絵、工芸品など、教科書で見るような逸品をずらりと展示し、お伝えします。
「北斎」と「広重」など巨匠たちの豪華競演
浮世絵の2大天才「葛飾北斎」と「歌川広重」、奇想派の「伊藤若冲」「曽我蕭白」など、前期と後期で各巨匠の作品を見比べることで、それぞれの個性の違いを感じることができます。
荒れ狂う波濤、自然の猛威になすすべもない船上の人々、それらの向こうに鎮座する富士。見る者に自分も海面に漂い、大波を見上げて波間に富士を垣間見ているような感覚を抱かせます。動と静、遠と近の対比が際立つこの作品は、画家ゴッホが絶賛し、ドビュッシーに交響曲『海』を着想させるなど、芸術家たちに影響を与えたことでも知られています。江戸の眼前に広がる江戸湾(東京湾)は、漁船や各地からの廻船の通行が盛んであり、中世から品川、神奈川、六浦などの湊が存在しました。図中の三艘の船は押送(おしおくり)船と呼ばれ、房総半島から江戸に海産物を運ぶ際に利用されました。本図は、東から西へ、江戸湾で神奈川の対岸にあたる木更津の沖合付近から富士を望んだという説があります。
現在は新大橋としてかかっている橋で、広重は橋脚もしっかりと描いています。雨に濡れないように、着物の裾をまくり上げ、傘を目深にかぶり帰路を急ぐ様子が描かれています。雨を細い線で表すと共に、霞む向こう岸をぼかしを使うことで遠近感がある作品となっています。作品毎に地模様が異なり細かい部分ですが凝ったデザインとなっています。“あてなしぼかし”と言って、平らな板の上で、描くように摺師がこのぼかしを作ります。大橋は日本橋の浜町から深川六間堀の方にかかっていた橋で、幕府の御用船安宅丸の船蔵があったことから、安宅(あたけ)と呼ばれました。構図、色調、描写どれをとっても完璧です。にわかに降り出した夕立の様が、実に見事に描かれています。本作は、印象派の画家として有名なゴッホが模写したことでもよく知られています。
<葛飾 北斎>
森羅万象あらゆるものの真を描くことに執念を燃やし、老いてなお、その制作意欲は衰えることなく、九十年の生涯で、数多くの作品を残しました。1999年、米ライフ誌が選んだ「この1000年で最も重要な功績を残した世界の人物100人」に唯一選ばれた日本人であり、近年最も注目を集めている浮世絵師です。
<歌川 広重>
天保年間に保永堂から出版された全55図の「東海道五十三次」が大ヒットし、以降数々の東海道の風景画を描きました。 花鳥画にも詩情溢れる優品を残し、最晩年に手がけた一大連作「名所江戸百景」では、四季折々の江戸の風景を、独特の視点と豊かな感性で描き出しました。同シリーズは、ゴッホが模写したことでも知られています。